自転車やランニングなどの持久系スポーツでは、メイン競技とは異なる種目をトレーニングに取り入れるケースは珍しくないと思います。
例えば、自転車選手がランニングを行ったり、ランナーがサイクリングを行うといったクロストレーニングである。
今回紹介する研究では、ランニングとサイクリングを同一条件の高強度インターバルトレーニング(HIIT)として比較し、両者の生理的反応に明確な違いがあることが示されている。
結論から言えば、「似ているが同じではない」。この違いをどのように理解するかが、トレーニング設計の精度に直接影響します。
詳細は下記リンクを参照ください。
The physiological, perceptual and neuromuscular responses of team sport athletes to a running and cycling high intensity interval training session | European Journal of Applied Physiology | Springer Nature Link
研究概要
本研究はチームスポーツ選手を対象に行われたクロスオーバー試験である。
- 同一被験者がランニングとサイクリングの両方を実施
- HIITは「15秒高強度+15秒休息」
- 強度は最大酸素摂取量に対する相対強度で統一
測定項目は以下:
- 酸素摂取量(VO₂)
- 心拍数
- 90%以上VO₂max滞在時間
- 筋疲労(膝伸展筋力)
- 主観的運動強度(RPE)
心肺負荷はランニングの方が高い
結果として最も明確だったのは心肺応答の差である。
- VO₂はランニングの方が高い
- 心拍数もランニングが高い
- VO₂maxの90%以上にいる時間も長い
つまり同じHIITでも、ランニングの方が「心肺刺激として強い」傾向がある。
これは私の実感としてもランニングの方が心肺への刺激は強いと感じてます。
サイクリングは閾値刺激に到達しにくい
サイクリングでは以下の特徴が見られた。
- 高強度域への到達時間が短い
- VO₂max近傍での滞在時間が少ない
そのため、心肺系への適応刺激という観点ではランニングに劣る可能性が示されている。
筋疲労の特徴は逆になる
一方で筋疲労のパターンは異なる。
- サイクリング:膝伸展筋力の低下が大きい
- ランニング:筋力低下は小さい
これは運動様式の違いによるもので、
- サイクリング:局所筋への反復負荷
- ランニング:衝撃と全身分散負荷
の差が影響していると考えられる。
このあたりも実感しやすい点ですね。
主観的負荷は単純ではない
興味深い点として、全体的なRPEは大きな差がなかった。
ただし内訳を見ると、
- 呼吸のきつさ:ランニングが高い
- 脚のきつさ:差は小さい
というように、負荷の質が異なっている。
この研究が示す本質
この結果を整理すると以下になる。
● 心肺刺激
ランニング > サイクリング
● 局所筋負荷
サイクリング > ランニング
● 主観的負荷
同程度だが内容が異なる
トレーニングへの示唆
この研究は「どちらが優れているか」を示すものではない。
むしろ重要なのは以下である。
- ランニングは心肺適応刺激として強い
- サイクリングは筋負荷と総量確保に向く
- 同じHIITでも代替関係は成立しない
つまりクロストレーニングは完全な置き換えではなく、目的に応じた補完手段として扱う必要がある。
まとめ
同一条件のHIITであっても、ランニングとサイクリングは同じ生理刺激にはならない。
- ランニング:心肺刺激が強い
- サイクリング:局所筋負荷が強い
そのため、トレーニング設計では「同じHIITだから同じ効果」とは考えない方が合理的である。
ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 [ ジャック・ダニエルズ ]
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